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借金で首が回らない理由を専門家が解説

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2014年7月6日

借金で前が見えない人

語源と由来

皆さんもご存じの「借金で首が回らない」という言い回し。この言葉の意味と語源を考えると東洋医学のことがわかります。

 

では、実際のところ、借金をすると頚はどうなるのでしょうか。本当に首が回らなくなってしまうのでしょうか。そんなわけがないと思ったら大間違い。本当なのです。

首の痛み

ただ、借りた時より返済が難しくなった時かもしれませんね。金銭的に追い詰められると、精神的まで追い詰められます。この余裕を奪われた精神が、首をガチガチにして回らないようにしている原因なのです。

 

辞書は、「首が回らない」を「やりくりがつかない」と説明していますが、語源ははっきりしていないようです。ですが、鍼灸師の勘で言うと、実際に首が回らなくなった経験が語源になっていることは間違いないでしょう(責任は負えません)。

 

胸椎のツボ

私はこれまで、数え切れないほど首が回らなくなった患者さんを診てきました。借金とは限りませんが、精神的に追い込まれていると首に異常が出現することは明らかです。そこには、れっきとしたメカニズムが存在しています。

 

胸椎5番

背骨の一部を成している胸椎は全部で12あります。その5番目と6番目の間に神道(しんどう)というツボがあります。そこから水平に横に行けば心兪(しんゆ)、さらに離れると神堂(しんどう)というツボがあります。ツボの名前に使われている「神」や「心」の意味を考えることが謎を解く上で重要です。

胸椎5番のツボ(神道・心兪・神堂)

そもそも、ツボは正式には経穴(けいけつ)と言い、経絡(けいらく)という気の流れるルート上に位置しています。経絡は内臓や筋肉を走行しているため、経穴は内臓や筋肉が外部と接する接点のようなものです。簡単に言ってしまえば、内臓や筋肉の状態が体表に表れやすいところであり、体表から内臓や筋肉に影響を及ぼしやすいところです。

 

胸椎5番の高さに並ぶツボに話を戻しましょう。「神道-心兪-神堂」という横並びから推測できることは、精神状態がダイレクトに表れるツボであること。そして心臓との関わりです。実際に、不安に襲われたときに動悸がする、逆に動悸がすると不安になる、という現象と一致します。

首が回らなくなる原因

ここから、首が回らなくなるメカニズムを解説します。

精神状態が悪いと身体の動きまで鈍くなります。脊柱の動きも鈍ります。その代表が胸椎5番です。上で説明したツボに表れる変化(コリ、痛みなど)は、胸椎5番の動きが止まった結果として起こるものです。

 

とはいえ、「胸椎5番の動きが止まった」と感じられる人はいません。背中が重い、張る、凝るという感覚として表れるのです。そのまま精神状態が回復しなければ、異常は胸椎5番から波及していきます。もっとも影響がを受けるのが頚部です。

 

特に、回旋が鈍くなります。回旋とは左右に振り向く動きです。観察すると、頚のある部分に異常な緊張が見つかります。完骨(かんこつ)と言われる耳たぶの後ろから少し下がったところにあるツボです。

 

首が回らない時の触診点

 

カポスでは経験上、教科書的な完骨よりも少し下の方を触診して緊張具合を判断しています。ここには胸鎖乳突筋、頭板状筋、頚板状筋、頭最長筋などの筋肉が折り重なっています。術者の指先に感じる緊張(硬さ)は複合的なものですから、筋肉を一つに絞り込むことはできません。

 

後谿

顔は硬くなっている方向に振り向けなくなります。無理に向こうとすれば痛みを感じます。左右両方とも硬くなってしまうと、どっちの方向にも振り向けません。向けるようにするには、完骨周辺をやさしく丁寧にマッサージすれば改善します。しかし、根本的な解決を目指すなら、もう一歩踏み込んだ処方が必要です。

 

もうお分かりですよね。胸椎5番の調整が必要なのです。私たちが行う方法は2つあります。胸椎5番の近くに鍼をするなどして筋肉を緩めること。もう一つは、手のツボを使って胸椎5番を調整することです。胸椎5番を動かしてくれるツボに、後谿(こうけい)があります。小指の付け根の付近にあります。

胸椎の異常がもたらす症状

腰の痛みこの胸椎5番はクセモノで、ここに異常があると仙腸関節という骨盤の関節の動きまで止めてしまいます。その結果、腰を真っ直ぐに伸ばすことが困難になり、出っ尻になります。専門的にいうと骨盤が前傾傾向(前回り方向)になって固まっている状態です。後谿は、ぎっくり腰の治療にも使われることが多いのですが、効果がある理由は、前傾傾向(前回り方向)に固まった骨盤を元の位置に戻してくれるからなのです。

 

精神異常が肉体にもたらす影響は、胸椎の5番ばかりではありません。感情のパターンによって位置が変わります。胸椎の番号によって首(頚)に生じる問題も異なります。その位置を単純に前、横、後に分けて、引き起こされる症状をまとめてみました。どの場合も、最初は気がつかない程度の可動域制限ですが、あるラインを越えると深刻な状態に陥ってしまいます。

 

喉のつまり(梅核気) 声が出ない(嗄声) 動悸 顔面神経麻痺…
首が回らない 寝違い 耳鳴り 突発性難聴 めまい 眼精疲労…
下を向けない 上を向けない 頭痛 眼精疲労 目の痛み…

 

東洋人の知恵

「借金で首が回らない」という現象から、精神と肉体が密接に関わっていることがお分かり頂けたと思います。昔の東洋人は、丁寧な人間観察によって精神と肉体の関係を明らかにしていたのです。さらに、その2つを同時に捉える心身一如という境地にまで達しています。

 

このような視点から見ると、頚椎の画像を撮ったり、首を引っ張ったりするのは、現象の一部にアプローチしているだけです。借金が返せなくて頚が右にも左に動かなくなってしまった人は、どんな治療よりも、宝くじの当選の方が効果があるでしょう。

 

私たちの鍼灸治療は、身心に対して肉体側からアプローチするわけですが、その作用は裏面の心にも及んでいるはずです。鍼灸を受けると、心が軽くなって穏やかな気持ちになれます。このような精神への作用は、鍼灸の特筆しておきたい特徴の一つです。鍼灸院を利用されている方にとってはもう当たり前かもしれませんね。

<オーナー:栗原誠>

 

初めての鍼灸院

この記事を書いた人

はりきゅうルーム カポス オーナー(鍼灸師)

群馬に拠点を置き、東京と往復しながら慌ただしく仕事しています。効果がわかりやすい鍼灸を求めて研究の日々。その成果をカポスにどんどん投入しています。

 

養気院 院長

株式会社 活法ラボ 代表

一般社団法人 整動協会 代表

 

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