群馬研修日記・坂口編(16) 最高の鍼メーカーはどこか
坂口です。研修17日目です。
(15)「ハリをしたのに変化なし。その時オーナーが取った行動とは…」のつづき
鍼灸師が使う”鍼(はり)”には、様々な種類があります。基本的には、鍼そのものと鍼管(しんかん)という管がセットになっています。この管は日本で生まれたものであるため、中国ではあまり使われていません。
鍼を作っているメーカーはたくさんあり、「○寸△番」のように太さと長さ、さらに鍼管や鍼柄の材質にも様々なバリエーションがあり、どれを選択するかは鍼灸師によって違います。
鍼灸師同士で話をしていると「どこの鍼がええねん?」という話になることがあります。たいがい、鍼そのものの話になるのですが、オーナーは鍼管に異常なほどこだわっています。
特に鍼管の太さにです。
今でこそ「そりゃ、鍼管は細い方が良いよね」と思っている私ですが、研修に来る前は鍼管の太さなんて気にもしませんでした。鍼管の太さの重要性に気づかされたのは、群馬研修の直前に参加した「整動鍼セミナー」でした。
ツボに鍼が当たらない理由
セミナー中、ツボにサインペンの細い方で1mmほどの印をつけ、そこに鍼を刺す練習を行いました。印はペン先でチョン、とつける程度の小さなものです。
印の上に鍼管を当て、いつものように鍼をしたら驚きの事態が!
なんと、刺した鍼が印にかすりもしていません。マジックの印から2mmほどズレたところに、鍼が刺さっていたのです。
なんで、なんで?
マジックの印の真上に鍼管を当てたはずなのに…
あわてて、セミナー講師の秋澤院長に質問してみました。
坂口「鍼がマジックの印に当たってないですが、これは誤差の範囲として許されますよね?」
秋澤院長「いや、ダメだね。それだけズレると別のツボになっちゃうから」
なんと。ツボって、そこまで細かいのか…だって、2mmズレただけですよ。
なぜ、鍼を思ったところに刺せないのか?疑問に思って、鍼を鍼管にセットした状態で、よく観察してみました。
すると、予想外の現実が!
言葉で説明するのは難しいので、図をご覧ください。
左の図が、私のイメージしていた状態です。
そして右の図が、実際の状態です。鍼管のフチはペラッペラで、これを皮膚に当てたらさぞ痛いでしょう。しかも、鍼が大きく曲がっていて、これでは狙ったところに刺さらないのもうなずけます。
さらに興味が出てきて、養気院にある鍼を調べてみました。
鍼管の内径を測ってみた
今回、調査したのはこの2つ。それぞれ異なるメーカーの鍼です。
ちなみに、右がいつもオーナーが使っている鍼です。それぞれの鍼管の太さを測ってみました。
まずは写真の左の方から。
ものさしの1目盛りが0.5mmなので、鍼管の内径は5目盛り、つまり2.5mmありました。
ツボの大きさは1mm×1mm程度なので、2.5mm×2.5mmでは大きすぎます。
次に、オーナーがいつも使っている方を測ってみます。
3目盛りなので、鍼管の内径は0.5mm×3目盛り=1.5mmでした。
先ほどの鍼管と内径は1mmしか違いませんが、オーナーによると、使用感はかなり異なるそうです。
しかも、この内径1.5mmのいつも使っているものでも、満足はしていないとのこと。
というかそもそも、臨床中に本気でツボを狙っているときは、鍼管を使わず、鍼を直接刺しています。
ちなみにオーナー、まだ最高の鍼には出会っていないそうです。
「どっかのメーカーが、もっと細いやつ作ってくんないかな~」とぼやいていました。
鍼がツボから1mmでも外れると
鍼管の太さに注目する視点も驚きでしたが、それ以上にショックだったのは「自分の感覚は鍼の細さに対してあまりにもおおざっぱだ」という現実を突きつけられたことです。
今まで0.1~0.2mmほどの鍼という繊細な道具を使っていながら、私の感覚はせいぜい1cm単位ほどでしかありませんでした。
鍼がツボから1mmでも外れると、狙った効果は得られません。「毎回、同じところに鍼してるつもりなのに効果がバラバラ」という時、バラバラなのはツボの方なのかもしれません。もしこの研修を受けていなかったら、いつ気が付いていたか・・・。
今気づくことが出来て良かったと思います。あ~恐ろしい。
つづく…(17)「ツボの顔を覚えて!」
はりきゅうルーム カポス(鍼灸師)
本物の鍼を追究するために大阪からやってきました。
患者さんに「鍼って本当に効くんですね」と言ってもらえた時に、鍼灸師としてのやりがいを感じます。
好きな言葉は「勝ちに不思議の勝ちあり 負けに不思議の負けなし」 趣味はサウナ。
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