群馬研修日記・坂口編(15) ハリをしたのに変化なし。その時オーナーが取った行動とは…
坂口です。研修16日目です。
(14)「鍼灸師が活法を学ぶ理由(後編)『センスのある鍼灸師とは』」のつづき
先日、オーナーの施術を見学していた時のことです。珍しい光景を目にしました。
オーナーのハリが効かなかった
腰痛の患者さん(女性)でした。ベッドに腰掛けて動きをチェックすると、身体を前に倒しながら右にひねった時に腰痛が出ます。
うつぶせに寝てもらって、膝のツボに鍼を一本打ちました。すぐさま腰の筋肉の状態を確認したところ、患者さんは「う~ん・・・」な感じです。
オーナーはいつも、「鍼はすぐ効く、鍼はハッキリ効く」と言っています。
この流れ・・・もしかして、マズイんじゃ?
勝手に気を揉む私をよそに、オーナーは「少し変化を待ちましょう」と言い、鍼をしたまま10分待つことにしました。
・・・そして、約束の10分後・・・
鍼を抜いてベッドに腰掛けてもらい、もう一度先ほどの動きをチェックします。またもや、患者さんは「痛みはあるが、動けないことはない」という渋い反応です。
待ってもダメ・・・いよいよマズいのでは?
極めつけに、患者さんは「そう言えば、肩こりもあるんですよね~」と言い出しました。変化しないので、腰のことあきらめちゃったのか?
やっちまったか、オーナー。
オーナーの顔を恐る恐る見ると、目がキラリと光っています。
なんだ、この目は!?
そして何を思ったか、患者さんに肩こりの状態を尋ね始めました。
だいじょうぶか、オーナー???
まさか、腰痛をなかったことにする気では!
と思っているうちに、背中に鍼を一本刺し、あっという間に抜いたと思ったら、
オーナー「首、触っていいですよ」
患者さん「はい。 ・・・え? ラクッ! なんで~?」
オ「それはよかったです。ところで、腰はどうですか?」
患「あっ! 楽になってる! ないです。え、なんで? 」
オ「さっき痛かった動きやってみてください。他に痛み残ってるところないですか~? 何してもいいですよ。」
それを聞いた患者さんは、体を思いっきり捻りながらグニュ~と勢いよく前屈し始めました。そ、そこまでしなくても。
患「痛くない。どうしたら痛みが出るのか忘れちゃった!」
たった一本の鍼でピンチから抜け出し、かつ逆転。
結局、ハリ2本で患者さんは大満足。
すんません、オーナー。
「楽になった」は信じちゃいけない
この結末を見た時、私が前に務めていた鍼灸接骨院でのことを思い出しました。
腰痛の患者さんをせっせと施術した後、具合を訪ねると「うん、たぶん楽になってる」という返事が返ってきました。
手持ちのカードを出し尽くしていた私は、「これで様子を見てください」と言って帰って頂く他ありませんでした。
今思えば、「たぶん」と言っている時点で、明確な変化は出ていません。おそらく私を気遣ってくれたのでしょう。
私の施術は「気のせい」を越えることなく、「変化」までたどり着いていなかったのです。オーナーの臨床を目の当たりにして、「変化」の意味がハッキリしました。
変化とは明確なものであり、以前の状態を思い出すことすらできなくなるものだと。
2手先を読んでいる
治療が終わった後、オーナーに「治療中、鍼をしたのに変化が出なくて焦ることはないんですか?」と聞くと、「あんまり無いね~」とのこと。
オーナーは常に2手以上先まで考えて治療をしているそうで、「この一本に賭ける!」ようなことはしないそうです。
では、どうしたら2手先まで読めるようになるのでしょうか?そこにも秘密がありそうです。探ります。
はりきゅうルーム カポス(鍼灸師)
本物の鍼を追究するために大阪からやってきました。
患者さんに「鍼って本当に効くんですね」と言ってもらえた時に、鍼灸師としてのやりがいを感じます。
好きな言葉は「勝ちに不思議の勝ちあり 負けに不思議の負けなし」 趣味はサウナ。
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