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4)花粉症のツボ発見

花粉症のツボの発見

理不尽な要求

風池活法に出会う前の話です。

 

花粉症にとって風池(ふうち)が重要であることはわかっていました。私に限らず、鍼灸師の多くは風池というツボが鼻の症状を改善するのに有効であることを知っています。特に鼻づまりにはとても効きます。

 

ただし、この風池で鼻がスゥーと楽にしても、風池はすぐに凝ってきます。そして鼻もつまってきます。風池だけで鼻の治療をしようとすると、どうしても一過性の効果しか得られないのです。根本的に鼻を改善させるには、風池をよい状態にできるツボの存在が必要だと考えたのです。

 

頚のコリを遠隔から緩める方法はいくつも知られています。ただ、風池という一点をダイレクトに緩めるツボは知られていません。新しいツボが見つかることもなく月日は流れていきました。

 

ある日のこと、患者さんが困った注文をしました。三叉神経痛(顔面の痛み)を「頚から上はいっさい触れないでほしい」と言うのです。三叉神経痛にあの風池はよく効きます。他にも頚には使いたいツボをありました。それらを全て奪われてしまったので、手足、腹、背中で何とかするしかなくなったのです。

 

お断りしてもよかったのですが、私の気まぐれで引き受けてしまったのです。なんとかなるかもしれない、そんな気がしたのかもしれません。引き受けてしまった以上は全力でやるしかありません。運が味方をしてくれました。症状は徐々に和らいでいきました。そして、ある程度までよくなったところで治療を終了しました。

 

風池に効くツボは見つかりませんでしたが、症状を遠隔から何とかしようともがいた経験が次の幸運をもたらしたのだと思います。

ピンポイントな要求

私が活法と出会ったのは、この2年後くらいだったと思います。これから書くエピソードは活法と出会って日が浅い頃のものです。20代後半の女性の患者さんがやってきました。日頃からよく診ていた頚こりや肩こりで悩む方でした。要望の中に一つ、私を苦しませるものがありました。

 

それは、頚の特定部分のコリがどうしても取れないというのです。そこは風池の少し下方に位置する部分。そこに直接ハリもしてみました。その場ではよいのですが、数日するとコリ感が戻ってしまうのです。私は一過性の効果しか出せず、完全に敗北したのです。

 

それでも、患者さんは通ってくれました。期待に応えられない時は心苦しいものです。なんとか期待に応えようと必死でした。そしてある時、活法がヒントをくれたのです。コリを相手にするのではなく、動きを相手にしようと考えたのです。コリは筋肉が凝り固まって十分な伸縮性がありません。ですから、コリがあるということは、そこに動きの不具合が必ず生じているのです。それは本人が自覚しているとは限りません。

 

狙いを肩甲骨に絞り込みました。すると、ある一点が異常に硬いことに気がつきました。そこにハリをしてみることにしました。すると、あれだけ頑固だったコリがその瞬間からフニャっとほぐれてなくなったのです。その効果は一過性に終わらず、何度か続けていたら調子が安定するようになりました。

 

この経験があってから、頚のコリと肩甲骨の関係を考えるようになりました。肩甲骨が動かなくなると頚も動かなくなることは間違いありません。私の関心は、肩甲骨のどこに問題あると、頚のどこに問題が発生するのかという関係に向かっていました。実践の中で細かな検証を続けていくと、そこには法則性がありました。その法則性を美しいと感じ、さらに知りたいと思うようになったのです。

 

新しい法則を見つけるヒントは碓井流活法にありました。活法が上手になればなるほど、ハリも上手になる関係が出来上がってきたのです。私が目標としていた「鍼灸×活法」の姿がぼんやりと浮かび上がりました。

ただの思いつきだった

活法を始めて1年が経過した2009年。例の風池に対するアプローチも可能になりました。花粉症に悩む患者さんに試すことにしました。最初は、少しでも軽減すればよい、という軽い気持ちでした。結果は、私の想像以上でした。「あれから何ともないです」というビックリするような感想を頂けたのです。

 

症状が劇的に改善する人には共通点がありました。それは単純なことで、週に1~2回施術した人でした。こうした経験から、花粉症を治すには少なくとも週に1回の施術が必要だと結論づけました。完治例が続発しました。

 

説明した通りで、花粉症治療は花粉症研究から生まれたわけではないのです。むしろ肩こり治療のおまけ程度の扱いをされていたのです。そんな私を、花粉症に夢中にさせる事件がありました。

 

雪解けの季節、ある女性の患者さんがティッシュを鼻に当てながら入ってきました。鼻水が止まらないというのです。話を聞いてみると、長年花粉症を患っており、春と秋は毎年ひどくて困っていることがわかりました。別の症状で来院したため、花粉症の治療が目的ではありませんでした。ですから、私に花粉症治療は期待していませんでした。

 

私は、この状況を利用して実験することにしました。それは軽い思いつきでした。サンプルで頂いていたシール型の超微細鍼が目に入っただけのことです。風池に作用するツボに貼ってみることにしました。副作用があるわけではありませんから、効果がなかったら、それまでのこと。多少でも鼻水が減ったら患者さんは喜んでくれるだろう、という程度でした。その日は、鼻水をズルズルしたままお帰りになりました。

 

数日後、その患者さんは再びやってきました。「あれから鼻水はどうでした?」とダメモトな気分で尋ねてみると、「家に着く頃から症状がなくなって、あれからほとんど症状が出ていないんですよ~」と喜びの声。しかし、私は喜ばないようにしました。たまたまかもしれなからです。サンプルを使い切ってしまったので慌てて購入し、同じツボに超微細鍼を貼り続けてみることにしたのです。

 

さらに数日後。今度は「症状が全然ありません」と。その次もその次も無症状。疑い深い私は「例年、この季節はどうなのですか?」と何度も確認しました。答えはいつも同じでした。「毎年ヒドイですよ。こんなふうにいられません。」と。5回程度終わった頃、患者さんに告げました。「もしかすると、これはスゴイことを発見してしまったかもしれません。」と。

 

それから超微細鍼のテストが続きました。結果が出るたびに、花粉症治療が特別なものになっていきました。そして、ある時からこの技術をもっとたくさんに人に知ってほしいと思うようになりました。その発信地として品川を選びました。

難しいプロセス

花粉症のツボの研究ツボの発見は偶然だったかもしれませんが、偶然では解決できない問題がすぐに浮上しました。それは、発見したツボがあまりに単純であるため、そのままでは考案者としての権利を守るのが難しいことでした。

 

「発見したツボは、みんなに教えてみんなで使えばいい。ケチな事は言うな。」と思われるかもしれません。でも、そうはいかない事情があります。私たちのような鍼灸師は研究機関に所属していません。新発見に誰かが報酬を支払ってくれることはないのです。技術研究に対する対価を得るためには、臨床での実績を積み上げて価値を証明していくしかありません。

 

発見したツボは9つのパーツに分解することになりました。9つのツボを組み合わせることで同じ効果が出るように複雑化してあります。詳しい内容は企業秘密になるのでお話しできません。難しいプロセスを経て現在に至っていることは確かなことです。まだまだ新しい技術です。この秘密を知りたいと思う方が一人でも増えるように、症例を積み上げていくことに私たちは専念しようと思っています。

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